実践版 失敗の本質 著者:戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾考生/村井友秀/野中郁次郎
骨のある一冊でした。読書の時間も長くかかってしまったものの、学べる部分も多くありました。戦争なので、相手国があります。両国で多くの人の尊い命が無くなってしまったことは残念としか言いようがありません。簡単に失敗という言葉では表せませんが、私にとってとても教訓になると思っております。
どんな場合に失敗が起きたのか、その時相手は何をしていたのかということは、失敗を語る上でもっとも大切なことだと思いました。相手の分析はとても重要とされている、自分の分析が次なるじぶんの行動を修正してくれるということです。
失敗の本質では、日本軍の失敗から学ぶことを目的にしており、戦略や戦術について6つの戦いの事例を紹介しています。一章がこの失敗の事例研究になっています。
一度の失敗から何を学んだのかということが、日本が負けていく事例からみえてきました。6つ戦いでの共通点は、指揮系統はあるものの伝わっていなかったこと、伝わるも会議室と現場ではその状況はまったく違っていたことがあり過ぎたのではないかと思ってしまいました。
日本軍としての意思統一になります。最終目的もあやふやであった点は否めません。こうなると米軍が引くだろう。これを勝ちという評価をしていたように感じます。米国はこの島を奪還するという、誰でもわかることをしております。
作戦の一つとして、米軍は日本軍の航空母艦をミッションとした場合は、駆逐艦や護衛艦は攻撃対象ではないことから、航空母艦を対象に攻撃する。航空母艦を沈めることが任務の成功として考えてその徹底ぶりがあったようで、ミッションに対しての意思統一の硬さが強く、そのことが被害を最小限に留めることが出来ていたのではと思います。
事実を直視することを避けていた日本軍と事実から学び冷静に判断できた米軍の違いがあります。これらの違いは、教育にあったのではないかと思います。日本では陸軍士官学校、海軍士官学校を卒業して、模範解答を解いて上級士官になっていく、このような方法を用いたことが次の失敗を招く結果になってしまったのではないかと思っております。
米軍はシステム的に上官を選ぶ方法を採用していた。実践経験を積んだ中から選ばれて複数の人からの推薦がなければ、上官にはなれない。選定プログラムには、人的感情が一切排除された形になっている、複数回行われて人として、軍人として適正であるかという点が最も評価されている。
そのために、上官に選ばれた人は自信を持ち自分の考えをしっかりと、上にも下にも伝える力があったとされている点は大きいことであったと思います。
ビジネスに置き換えても、これは同じことになるのではないかと思っております。トップが一度決断したことを回りが気兼ねをして、意見を言えない体質は企業や会社にとって良い状態ではありません。風通しがよいと様々な意見があるでしょう、時には批判もあるかも知れません。
でも、真っ向から立ち向かって堂々と意見をいい、納得してもらうことが必要です。納得の上に同じ方向をみんなで共有する、時には方向転換する勇気も必要です。
つたない私の考えは、どうでもいい人には意見は言いません。どうせ聞く耳を持たないでしょうし、言うだけ私の労力も無駄になるからです。そういう人はすでに自分の意思があり、確認のために聞いている場合も多く、正論で反論されるともう近寄ってくることもありません。
反論されて、その反論を打ち砕き納得させるような考えをもっていなければ、失敗は目に見えています。
最後に失敗から学ぶことは、私たちの特権でもあると思うのです。もっとも大切な失敗から学ぶことは、もう戦争をしないことです。させないことです。人の命を奪うことは何人もできないということです。

- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08
- メディア: 文庫
- 購入: 55人 クリック: 1,360回
- この商品を含むブログ (288件) を見る
序章 日本軍の失敗から何を学ぶか
一章 失敗の事例研究-失敗の序曲
二章 失敗の本質-戦略・組織における日本軍の失敗の分析
三章 失敗の教訓-日本軍の失敗の本質と今日的課題